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ウィザードブックシリーズ Vol.107



トレーダーの心理学
トレーディングコーチが伝授する達人への道






アリ・キエフ
講演セミナー



アリ・キエフの
インタビュー掲載

2006年8月9日発売
四六判 512頁
ISBN4-7759-7073-9 C2033
定価本体2,800円+税


編者 アリ・キエフ
訳者 井田京子


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著者紹介 | 目次 | はじめに | 序論 | 訳者あとがき | 関連書籍 | 読者のご意見
著者

アリ・キエフ

原書

『Hedge Fund Masters』

トレーディングの世界的コーチが伝授する
成功するトレーダーと消えていくトレーダーの違いとは?

「キエフ博士は、8年前の『トレーディング・トゥ・ウィン』から始めたトレーディ ングで成功するために必須の精神的なものへの探求を継続して行っている。マネーマ ネジャーたちの実際の対話が満載の本書は、勇気、粘り強さ、相反する認識、精神的 な葛藤など、達人になるための多くの要素について探求しており、トレーディングの レベルを上げたい人にとっての必読書と言えるだろう」――ジェイ・G・ゴールドマ ン(ヘッジファンドマネジャー)


成功するトレーダーと並みのトレーダーの違いとは……

 人生でもトレーディングでも成功するためには、勝つことと負けるにかかわるプレ ッシャーを取り除く必要がある。実際、勝敗に直接結びつくプレッシャーを乗り越え られるかどうかは、成功するトレーダーと普通のトレーダーを分ける主な要因のひと つになっている。

 トレーディングの心理的側面の研究者で、高名な心理学者かつトレーディングの コーチでもあるアリ・キエフ博士は、高い評価を受けた3冊の著者を執筆以降、10年 間にわたって金融市場が大変な困難を伴う挑戦の場であるかを直接見てきた。この 間、博士がコーチングを行ってきた人たちのなかにはヘッジファンドマネジャーが数 多くいた。この仕事は、高パフォーマンスを上げることに対するプレッシャーと利益 が密接に絡む金融業界のなかでも、もっとも心理的負担の大きい職種のひとつと言える。

 経験豊富なプロでも、積極的な個人トレーダーでも、成功を阻む心理的障害に圧倒 されることはあるが、それを克服することもできる。本書では、革新的なトレーダー の心理的な法則と戦略を検証し、そこから潜在的なトレーディング能力を引き出して トレーディングのゴールを達成する方法を紹介している。世界でもっとも成功してい るヘッジファンドマネジャーたちを相手に交わした多くの対話や実際のケーススタデ ィを通して、次のような発見をしてほしい。

 徹底的な洞察と実践的なアドバイスが詰まった本書は、自分の潜在能力を引き出す 姿勢とテクニックを伸ばし、自信をつけ、メンタルイメージや視覚化、リラックス 法、忍耐力を向上させるためのスキルに磨きをかけてくれる。このなかで紹介するさ まざまな心理面の練習には、動機や集中力やストレス環境下におけるパフォーマンス を維持するための助けにもなると思う。

 本書は、成功したトレーダーの心の中をのぞくことができる貴重な1冊と言える。 彼らの精神構造を理解することによって、月並みとか現状維持といった自分自身に対 するマイナスの概念を放棄して、マーケットがどんな難しい状況でも成功できる思考 態度を伸ばしていくことができる。

■本書への賛辞

「トレーディングに対する優れた洞察にあふれた本書で、キエフ博士は同じ出来事に 出遭ってもトレーダーたちの反応はひとりひとり違うし、この世界で生き残っている トレーダーには規律と手法が確立していると書いている。しかし、それならば本書に はどのような意味があるのだろうか。一流のスポーツ選手にもコーチが必要なよう に、一流のプロのトレーダーにもコーチがいる。悪賢いトレーダーの心理でさえかき乱す“生命原理”に対する博士の理解が、すべての可能性を引き出すためのカギのひ とつになっている。本書のあらゆるページに、自分のスキルを再評価し、向上させる ための言葉や質問を見いだすことができるだろう」――イアン・バーンズ(シティグ ループ・マネジングディレクター)

「キエフ博士の指摘は、投資やトレーディング判断に影響を与える部分の核心をつい ている。マーケットのような緊迫した状況で、実際にどう対処するかという問題につ いて取り上げた本はそう多くないが、本書はそれについて非常にうまく書かれてい る。本書に込められたメッセージについて考えることで、トレーディングに関する多 くの実践的思考と行動を引き出すことができるだろう」――クウィンティン・プライ ス(ガートモア・グローバル・インベストメンツCIO)

「最高のトレーディングのコーチであるアリ・キエフ博士が、最新かつ最高の研究成 果を紹介している1冊。この最新作で、博士はエリートのトレーダーたちとともに、 トレーダー版のリアリティTVを見せてくれている。博士は、トレーダーたちの心に 巣食う心理的なものや実際の会話、ピークパフォーマンスまでの道のりの具体例を聞 き出しながら、巧妙かつ刺激的で、洞察力にあふれた興味深いく描いている」――シ アラン・T・オケリー(バンク・オブ・アメリカの株式トレーディング部長)



■著者/アリ・キエフ(Ari Kiev)

精神科医で、ストレス管理とパフォーマンス向上が専門。ソーシャル・サイキアトリー・リサーチ・インスティチュートの代表も務める博士は、近年多くのトレーダーにストレス管理、ゴール設定、パフォーマンス向上についての助言を行っている。

マーケットの魔術師 株式編 増補版』にインタビューが紹介されている。『リスクの心理学』(ダイヤモンド社)、『トレーディング・トゥ・ウィン (Trading to Win)』『トレーディング・イン・ザ・ゾーン(Trading in the Zone)』など15の著作と、DVD『魔術師たちのコーチングセミナー』(パンローリング)がある。子息は、米ボブスレーの代表選手である。

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■目次

第1部 マスタリーとは何か
第1章 マスタリーの定義
マスタリーの心理
 ケーススタディ――マスタリーの必要性
見通しを立てる
 ケーススタディ――コミットするということ
過程を改善する
 ケーススタディ――マスタートレーダーになるためには
今を精いっぱい生きる
個人としてできること

第2章 見通しを立てる
生命原理とは何か
生命原理の仕組み
展望――第一ステップ
新たな展望を作る
 ケーススタディ――ゴールを視覚化し、実現する
展望を建設的なツールとして使う
 ケーススタディ――ゴールを建設的な活力として利用する
展望を作る
 ケーススタディ――ゴールを設定する
昔からの生命原理はトレーディングにどのように表れるのか
創造的なフラストレーションに打ち勝つ
あの飛行機から飛び降りろ
 ケーススタディ――意識的に戦いを広げる
「九つの点」の外で考える
 ケーススタディ――創造的思考
結果は気にしない
 ケーススタディ――自分の行動に責任を持つ
新しいアプローチの考え方



第2部 そこまでどうやって行くのか


第3章 戦略を立てる
基礎を構築する
 ケーススタディ――戦略を立てるときの最初の課題
さらに深く掘り下げる
 ケーススタディ――データの発掘
認知的不協和に対処する
 ケーススタディ――認知的不協和を探す
異なる視点を育てる
 ケーススタディ1――異なった視点を育てる
 ケーススタディ2――異なった視点を育てる
結果を測定する
 ケーススタディ――戦略を修正するために結果を測定する
自分の戦略に集中する
集中力を育てる

第4章 気を働かせる
リラクセーション反応を理解する
リラックス法を学ぶ
 ケーススタディ――リラックスと中枢状態になることを学ぶ
無執着または手放すことを学ぶ
 ケーススタディ――不快感に打ち勝つために意識を中枢に集める
気を実践に生かす
 ケーススタディ――展望を分かち合うことに集中する
 練習1 リラクセーション反応


第5章 成功を思い描く
視覚を利用する
 ケーススタディ――視覚化と瞑想
焦点を決める
集中力を高めるためのリラクセーション
 ケーススタディ――視覚イメージと集中
プラスの状態を維持する
視覚化を最大限利用する
脱感作を通して否定性をマスターする
前後関係を明確にする
 ケーススタディ――株の将来を視覚化する
 ケーススタディ――ポートフォリオマネジメントに視覚化を利用する
 練習2 リラックスして集中力を高める
 練習3 トレードに集中する
 練習4 自分の最大の強みを視覚化する
 練習5 マイナスをマスターする

第3部 何が邪魔をしているのか
第6章 すべての恐怖心の原因
自動思考と反応
内面の地図
考えることでそうなる
アドレナリン、恐怖、そしてストレス反応
不全感
「間違いを犯したに違いない」
恐怖は過去に生きる
過去に縛られて現在を無力に過ごす
拒絶に打ちのめされる
労力を惜しんだり避けたりする
致命的な現状
理由づけ――失敗のレシピ
「勝利」のジレンマ
まとめ――すべての恐怖の源

第7章 感情に対処する
不安の同調者を探す
 練習6――不安を乗り切る
 ケーススタディ――不安をコントロールする
陶酔感にひたる
 ケーススタディ――「ゴールデン・ドル」
スランプを見極める
 ケーススタディ――九・一一(同時多発テロ)からの復興
 ケーススタディ――感情をモニターする
混乱、フラストレーション、不確実性
 ケーススタディ――難しいマーケットに対処する
自分の感情をマスターする
 ケーススタディ――活発なトレーディングに伴う感情をマスターする

第8章 障害を克服する
中継地点
 ケーススタディ――抵抗について
完全主義や必要以上に勝とうとすること
 ケーススタディ――頭でっかちになる
回避と拒否
 ケーススタディ――トレードを避けてしまう
可能性を受け入れる
 ケーススタディ――ポジションを大きくしたくない
合理化
 ケーススタディ――合理化の失敗
強迫観念
 ケーススタディ――強迫観念に反応する
呪術的思考
 ケーススタディ――呪術的思考
ストレスに反応する

第4部 次にすべきこと


第9章 リスクをとる覚悟を決める
コミットメント――カギとなる姿勢
コミットするとどう見えるか
 コミットするために覚えておきたいこと
これまでの習慣に別れを告げる
自己監視の仕方
ゴールに近づく
忍耐と進度
 ケーススタディ――挫折に対する反応
創造的思考とリスク
 リスク1 「ギャップの中」で生きていくことの不安
 リスク2 真実を語る
 リスク3 「空虚」感
 リスク4 自己主張
 リスク5 自分を引き止める「社会的自己」を捨てる
 リスク6 共有
リスクのリワード
 さあ、始めよう
 偏見を持たずに聞く
 怒りをチャンスに変える
コミットメントは進行中の過程だ
ほかの人のアドバイスを聞く
コーチになる
 心を観察できるようになるためのチェックリスト
 まとめ――「今」を生きるために覚えておくべきこと

第10章 マスターになる
方向を見つける
 ケーススタディ――集中力を回復する
 ケーススタディ――逆行分析
柔軟性を身につける
 ポジションを見直す
 自分のリサーチを信じる
 企業を理解する
 自分の攻撃性に注意する
 自分のセクターをよく知る
 リスク・リワードについて知る
 思考過程を作りあげるための質問
 修正はゆっくりと
力と勢いをつける
 ケーススタディ――損失のあとでモメンタムを取り戻す
 ケーススタディ――モメンタムを維持するためにポジションサイズを調整する
有能感

訳者あとがき

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■はじめに

 腕が良くてもけっして偉大なトレーダーにはなれない人がいるのはなぜだろう。筆者はこのことについて12年間研究を重ねた末に、腕が良いトレーダーでもそのほとんどが明確なゴールを設定していないからだという考えに至った。また、もし設定していてもゴールに近づいたところで、それを達成できるかどうかが心配になり、そのストレスで効率的に機能できなくなってしまう場合もあった。さらに言えば、彼らのほとんどが心理的な障害を克服するためには特定のスキルが必要だし、不透明で予想のつかないマーケットにおいて勝ち続けるためには戦略がいるという考えを持っていないように見える。

 筆者の最初の著書である『トレーディング・トゥ・ウィン――ザ・サイコロジー・オブ・マスタリング・ザ・マーケット(Trading to Win:The Psychology of Mastering the Markets)』では、勝つため(それも、かつてないほどの勝利)に必要な精神的および感情的スタミナを高めるため、ゴール設定を重視したプログラムをステップごとに紹介した。そして、次に書いた『トレーディング・イン・ザ・ゾーン――マキシマイジング・パフォーマンス・ウイズ・フォーカス・アンド・ディシプリン(Trading in the Zone : Maximizing Performance with Focus and Discipline)』では、特定のゾーン(ゴールに向かってまっすぐ集中して取り組んでいる状態)に踏み込むことで最高水準のパフォーマンスを達成し、継続するためのテクニックについて具体的に考察した。そして同じテーマの3冊目である『リスクの心理学』(ダイヤモンド社)では、トレーディングでさらに勝つための心理について、特にリスクをとる意欲やリスクを調整したり管理したりする方法、トレーダーをだめにすることも多いリスクのとり方における病的なパターンなどについて詳しく見ていった。

 そして本書では、この概念の詳細まで踏み込んで、リーダーシップや周囲のやる気を高めることなどを含む高パフォーマンスの要因についても探求している。ここでは、高い水準、パフォーマンスの評価、そして自分自身と周りの人を不可欠な要素に変えていく能力といったマスターレベルの環境を作り上げていくということにまで踏み込んでいく。

 マスタリーとは、マスタリーについて語ることによってたどり着くものだと筆者は考えている。そこで、本書ではトレーダーとの会話を多数紹介している。これを読んで、既成概念の枠を打ち破っていくための対話にチャレンジし続けることの重要性を理解してほしい。さらに高いレベルを目指すトレーダーたちは、このような対話からそれまでトレードのパフォーマンスとはまったく関係ないと思っていた問題点を発見する。これらの対話を通じて、考え方を少し変えたり、これまでの思い込み(それが努力や成功を限定しているかもしれない)を捨てたりすると、何が可能かや、トレーダーが起こすことのできる奇跡が明らかになっていく。

 これまでたくさんのトレーダーと接してきたなかで、多くはこのような会話を積極的に望んだものの、なかには拒否したり、何としてでも避けようとする人もいた。また、自分にはすべて分かっているのだから手法を変えたりせず、これまでどおりのやり方を続けていきたいと言うトレーダーもいた。マスタリーとは、未知のものを知ろうとすることでもあることを考えれば、このタイプのトレーダーは、マスタリーになるための障害が何かという教訓をもたらしてくれる。

 筆者がかかわったトレーダーのほとんどが、ヘッジファンドという心理的な負担が大きい仕事をしていた。この世界は、銀行やミューチュアルファンドのように確実に利益が上がるという簡単な構造にはなっていない。ヘッジファンドでは自分自身を磨く必要があり、そのためには普通と違った調整が必要になるが、それがマスタリーへの道を整えることにもつながっている。つまり、彼らはゴールを設定し、ゴールのために力を尽くし、それを達成するために何をすべきか、ということを解析している。結局、達人の域に達するためには、自分自身を理解しなくてはいけない。自分自身が成功のための道具であり、トレーディングにかかわっている人たちと自分自身の感情や心理サインを読み取らなくてはならない。本書の目的は、マスタリーを目指すために必要なこれらのスキルを数多く開発し、磨き上げていくことにある。

 これまでの著作と同様に、本書でも企業名はあえて伏せてある。特定の企業自体より、それぞれの戦略に注目してほしい。また、本書に登場するトレーダーについても、プライバシーに配慮して個人の特定につながるような記述は控え、彼らの経験に含まれている一般的な原理に焦点を当てている。

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■序論

 一般に信じられているのとは反対に、最高の結果はクヌート・ロックニーとビンス・ロンバルディ(ともにアメフトの監督)の激論からではなく、実行者をリラックスさせるための冷静なアプローチから生まれる。実際、複雑な活動は感情の起伏があまり大きくないときでないとうまくいかない。もちろん、リラックスしすぎるのにも問題はあるが、偉大な成果は、集中力と注意を向ける方向をコントロールする能力によってもたらされる。そして、このことはトレーダーにもクオーターバックにも当てはまる。

 普通のトレーダーに比べて一流のトレーダーは、より勇敢で、より落ち着いている。そのうえ、意思が強くて自己主張もするし、自信にあふれ、冒険好きで、束縛もされない。彼らの自信の一部は、高い集中力と視覚化、そして中枢を働かせて、どんな状況にも対処できる能力からきている。

 トップトレーダーは、邪魔が入っても集中力を切らさないでいられる。これは、大切な原則か、トレーディングに関する情報を提供する戦略を持つことで可能になる。このような組織化された原則は、「儲かる方法を探し続ける」と決心するだけという簡単なことかもしれないし、「最高の会社を買って最低の会社を売る」といった複雑な概念かもしれない。大切な原則や展望は、優先順位を決め、ゴールを設定してそれを厳守する手助けになる。また、トップトレーダーは何かが起こる前にそれを思い描き、変化する市況に対応する準備を整えておく能力に優れている。最後に、彼らは中心の見つけ方、つまり自分のなかで外部情報と内部情報をバランスよく処理するポイントをつかむ能力にも恵まれている。

 これらのスキルを使うことで、トップトレーダーは目の前の課題に対して自分の持っている資源を活用し、記録的なパフォーマンスを打ち立てていくために必要なステップを導き出すことができる。これらの心理的スキルは、マスタートレーダーのパフォーマンスを最大にするだけでなく、高い緊張感を持続し、不安をコントロールしながら、不安、恐怖、自信喪失、そしてゴールを達成できるかどうかという懸念にも打ち勝ってしまう。  世の中には、さまざまな分野で成功したり、チャンピオンになったりするための手引書や多くの知識があふれている。もしかしたら、本書もマスターの域に達したトレーダーの手順とスキルとスタイルをまねした完璧なトレード戦略の枠組みを紹介するものだと誤解されているかもしれないが、それはまったく違う。

 むしろ、本書は達人トレーダーたちが身につけている原則を学ぶことでゴールを達成し、自分のなかに眠っている才能を見つけだすことに使ってほしい。本書で学ぶことができる内容をまとめると、次のようになる。

 本書では、さらにプラスの結果をイメージできるようになるための信念を築き上げていく手助けもしていく。  人生でもトレーディングでも、成功するためには勝敗にかかわってくるプレッシャーを取り除く必要がある。実際、そのプレッシャーを乗り越えられるかどうかは、成功するトレーダーと普通のトレーダーを分ける主な要因のひとつになっている。「心を空にする」ことが最高のパフォーマンスを生むことから、本書では勝ち負けに関するすべての考えを捨てる方法を伝授し、不安を減らす手助けをしたいと思っている。そこで、パフォーマンスが上がらないときに、エネルギー、気力、意欲、そしてストレスの下での集中力を弱めかねない憂鬱な反応をコントロールしたり、取り除いたりする方法を紹介していく。また、ストレスの多い環境で、意欲、集中力、忍耐力を維持していくための心理的トレーニングも覚えてほしい。

 心の中で成功のイメージを膨らませることができれば、成功に対する恐怖やさまざまな束縛を克服することができる。また、このような姿勢をリラックスして受け入れられるようになれば、ゴールが脅迫的なものではなくなるということも重要だろう。そこで、特定の活動によって目的を達成するために必要な、スキルのパーツを習得していくことにする。

 本書の目的は、精神面の潜在力を刺激し、自信をつけ、イメージを膨らますためのスキルを磨き、視覚化する力、リラックス法、忍耐力をつけるための正しい姿勢、テクニックを開発する手助けをすることにある。心の働きを理解すれば、月並みな自分や、現状を変えようとしないマイナスの自己概念を捨て去ることができる。そして、代わりに目的を達成することに向けてプラスの自己概念を育てていけば、トレーディングの潜在力も伸ばすことができる。

 達人の域に達するためのツールとして、概念や実践の競争力を探求するためのソクラテスのような対話は欠かせない。これは筆者がトレーダーやポートフォリオマネジャーに対してコーチングを行うときにも、やはり欠かせない手法になっている。そこで、筆者の手法を説明したり、トレーダーと一緒に仕事をするなかから生まれた達人の域に達するための原則を説明したりするとき、本書では多くの対話を用いている。

 この仕事を興味深いものにしてくれるのは、これらの対話の行間に秘められたわずかな感情の動きから読み取ってもらうしかないのかもしれない。また、同じ出来事でもトレーダーによってそれに対する反応が違うため、対話はけっして同じ展開にはならない。それでも、これまでの対話をある程度整理した結果、トレードについての話し合いから一般的な原則を導き出すことができたのではないかと思っている。

 達人への道は、トレーダーの実際の行動を疑問視することから始まる。途中でトレーダーたちが抵抗したり、筆者がそれに反論する場面もあるが、これは彼らの抵抗を誘発し、彼らがどれだけ固定観念にとらわれた見方をしているかを認識させるために、あえて行っている。断定的な姿勢を捨て去ることができれば、素晴らしい成果を上げることができるし、変化し続けるマーケットで素晴らしいチャンスを自由に探しあてられるようになるだろう。

 これらの対話のなかから、トレーディングに役立つ概念が見つかるかもしれない。しかしそれだけでなく、対話を通じて筆者の問いかけと励ましとともに高いパフォーマンスを目指して自分自身を伸ばしていったトレーダーたちの奮闘にも称賛を送ってほしい。

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■訳者あとがき

 本書は、著名な心理学者のアリ・キエフ博士による『Hedge Fund Masters』の邦訳である。このタイトルだけ見ると、カリスマトレーダーが専門用語を駆使して独自のテクニックを披露する本だと思うかもしれないが、それは違う。このタイトルのポイントは「ヘッジファンド」ではなくて「マスター」のほうにある。

 本書には、マスターとかマスタリーという言葉が何度も出てくる。しかし、「マスタリー」とは何だろう。本書によると、マスタリーとは「特定のスキルを習得する以上の意味を含んでいる」たぶんに精神的なもので、そういえば以前に読んだ合気道に関する文にも、「マスタリーとは高めたエネルギーを本当に自分のものとして使いこなすという意味」と書いてあった。これは「効率的にトレードするためだけでなく、効率的に生きる戦略」なのである。

 本書を訳していると、投資とは関係ない知人に読ませたい部分がたくさんあり、だんだん投資の本を訳しているという感じがなくなっていった。精神医学は、キエフ博士の経歴さながらに、スポーツ心理からトレーダー心理へと応用範囲を拡大してきた。それは、コーチングがスキルそのものを教えるのではなく、その向上を手助けするものだからだ。  訳者もエルダー博士、タープ博士といったパンローリングの読者にはおなじみの精神科医の本を訳す機会に恵まれたが、どちらも生きるためのヒントがあふれている。ただ、この二冊には投資の具体的な記述も多く、投資をしない人が手にとっても、専門用語がちかちかして、おもしろいところを掘り当てるのは難しいかもしれない。

 しかし、本書は売買の基本とポートフォリオマネジャー程度の用語が分かれば、人生、あるいは目指す分野のマスターになるためのコーチングの本として十分通用すると思う。書店なら「ゴールは絶対に達成できる!」などというジャンルに置いてもおかしくない。トレーディング以外にも、長い期間自分を律し、状況に合わせて変化し続けなければ成し遂げられないことはたくさんある。キエフ博士のご子息はボブスレーの元アメリカ代表選手だと聞いているが、これも直々にマスタリー教育を受けた成果なのかもしれない。

 もちろん、投資をする人たちは、さまざまなポートフォリオマネジャーのケースから、この業界で働く人たちが経験するさまざまな問題の非常に具体的なヒントが得られると思う。本書が、トレーディングと人生をレベルアップする手助けになれば、とてもうれしい。

 最後に、本書を訳す機会を下さったパンローリングの後藤社長と、スタッフの方々、編集その他でお世話になっている阿部氏(FGI)、そしていつもいてくれる家族に感謝したい。



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