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投資家のヨットはどこにある?

投資家のヨットはどこにある?
プロにだまされないための知恵

2010年12月発売/A5判 並本 256頁
ISBN 978-4-7759-7142-0 C2033
定価本体1,800円+税

著者 フレッド・シュエッド・ジュニア
監修 岡本和久
訳者 関岡孝平


著者紹介 | 目次 | まえがき | 関連書籍

金融業界の人々を痛烈に風刺したウォール街の名作

 〜昔々のものがたり〜

 おのぼりさんの一行が、ニューヨークの金融街を見学させてもらっていた。
 一行がウォール街にほど近いバッテリーパークへやって来ると、ガイドのひとりが停泊中のすばらしいヨットの数々を指さして言った。

 「ごらんください。あそこに並ぶヨットは、みな銀行家やブローカーのものですよ」

 気のきかない田舎者がこう聞いた。

 「お客のヨットはどこにあるのかね?」


 このジョークは、投資の世界ではリターンが不確実であるのに対して、コストが確実にあることを的確に象徴したものだ。
 著者シュエッドが見抜いた金融業界の真実は、今も昔も驚くほど変わらない。100年以上にわたって債券や株式の市場では、何度も手を変え品を変え、ドタバタ劇が繰り広げられている。しかし、本質(あらすじ)には変わりがないのだ。
 それは登場する人々――銀行、証券会社、投資信託会社、空売り屋、オプショントレーダー、そして“顧客”である投資家――の「キャラ」に、変わりがないからである。
 業界に登場する人種と構造の理解は、あらゆるビジネスで成功するための必須条件のひとつ。読者は、バブルと恐慌を間近に見た著者の毒舌に苦笑しながら、その概要を理解できるだろう。

“ウォール街は、一方の端に川があって、もう一方の端に墓場がある街だ”

なかなか、いい出来だ。しかし、これではまだ不完全である。
そう、真ん中の“幼稚園”を忘れている。
そして、その幼稚園(金融業界)こそが、本書の題材である。

『投資家のヨットはどこにある?』
第一章 序文「二流詩人の遠慮がちな咳払い」より

「投資について書かれた本の中で最も面白い本だ」
(2006年バークシャー・ハサウェイ社年次報告書より)
――ウォーレン・バフェット

「一度手に取ると、読み終えるまで手放せない。
シュエッドは、投資ビジネスの根底にある狂気をきれいな言葉で表現した」
――『ライアーズ・ポーカー』著者マイケル・ルイス

■著者紹介

フレッド・シュエッド・ジュニア(Fred Schwed Jr.)
1901年生まれ(02年という説もあり)。米ニューヨーク・ウォール街で1927年から約10年にわたり証券業務に携わる。1939年に著した児童書『Wacky, the SmallBoy』がベストセラーに。翌1940年に本書の初版を著し、好評を博した。1966年死去。

原題『Where Are the Customers' Yachts: or A Good Hard Look at Wall Street』



◎訳者/関岡孝平(せきおか・こうへい)
駿府生まれ、多摩在住。大学卒業後大手電気メーカーでコンピュータの開発に携わり、海外勤務も経験。数年前からまったくの独学で翻訳の勉強を開始。本書がその初めての成果となる。家族は男2人(自分も勘定にいれます)、女3人と犬2匹。趣味は読書、自転車、犬の相手。

◎監修者/岡本和久(おかもと・かずひさ)
米国コロンビア大学留学後、1971年慶應義塾大学経済学部卒。日興證券株式会社にてアナリスト兼ストラテジスト業務を担当したのち1992年退社。その後、現バークレイズ・グローバル・インベスターズ株式会社を設立し、代表取締役社長として年金運用に従事。2005年5月にI-Oウェルス・アドバイザーズ(株)を設立。現在、セミナーや資産運用教室などを開催する傍ら、クラブ・インベストライフを主催。おカネ、投資、運用に伴うストレスを癒す『ファイナンシャル・ヒーラー』をみずから任じている。日本証券投資顧問業協会理事、同協会副会長兼自主規制委員会委員長、投資信託協会理事、日本CFA(Chartered Financial Analyst)協会会長(2006年より名誉会長、現在に至る)などを歴任。I-Oウェルス・アドバイザーズ(株)http://www.i-owa.com/


■目次

まえがき

1955年ブルマーケット版への序文

第1章 序文――「二流詩人の遠慮がちな咳払い」
      相場予測の有効性について
      予言業はやめられない
      ブルが吹っ飛んだとき

第2章 金融家と占い師
      大手銀行家――なれるものならいい商売
      大物に次ぐ者たち
      思考の花に実る果実
      ウォール街の意味論
      チャート分析家
      報酬
      お金を「稼ぐ」ことの難しさ
      ミューズが宿らない芸術
      ちょっとした適性テスト

第3章 顧客たち―このたくましい種族
      顧客あれこれ
      顧客獲得法
      委託保証金
      ダムが決壊したときにすべきこと
      病例研究と診断結果
職業として金をこねくり回す

第4章 投資信託会社―期待と成績
      自分自身のミスをなくせ
      どこに罠がひそんでいるか?
      舗装された地獄への道
      「優良」証券の問題点
      七五万ドルの鳥
      謝罪がわりに
      魔法のような投資信託会社

第5章 空売り屋―腹黒いやつら
      被告側弁護人の陳述
      別の角度からの弁護
      ベアがいるとき、いないとき
      売り崩し

第6章 プットにコールにストラドル、そしてガーガー
      オプションとは何か(おおよそのところ)
      純然たるギャンブルを弁護する
      落とし穴

第7章 古き「よき」時代と「偉大なる」指導者たち
      大物たちのIQ
      投機についての討議
      ちょっとだけ脱線して確率論を
      揺りかごごと赤ちゃん落ちる
      「彼ら」
      相場操縦者たち
      ボウル一杯の五セント硬貨

第8章 投資――多数の質問と少々の回答
      金持ちの悩み
      ちょっとしたすてきなアドバイス
      価格対価値――われらが特選マーケットレター
      長期投資対象としての現金
      人の生きる道とベーシスブック

第9章 改革―その数年と異論
      盗まれたのか、なくしたのか?
      嫌われ者のスペシャリスト
      規制の届くところ、届かないところ
      締まらない締めくくり

著者について




■まえがき

  「お客のヨットはどこにある?(Where Are the Customers' Yachts?)」

 まず、このいっぷう風変わりな本書原題の由来について、冒頭にある短いエッセイをお読みいただきたい。
 というよりも、何をおいても(この「まえがき」を読むことを中止しても)、このウォール街に伝わるという古いジョークをお読みいただきたい。

 いかがだろうか。
 このジョークは、多くのスピーチや書籍で引用されている。私がこのジョークを初めて聞いたのは、おそらく10年ほど前、外資系投資顧問の社長をしていたころだった。アメリカで講演会に出席したとき、スピーチのなかで引用されていたと記憶している。その後、何度もこの話を聞いた。また、本で引用されているのを何度も読んだ。
 それほど、この話が有名になったのは、まさに本書によるところが大きい。

 本書が書かれたのは1940年だ。著者フレッド・シュエッド・ジュニアが、ユーモラスに、そして独特のシニシズムをもって描いているのは、30年代のウォール街を取り巻く人々の姿である。
 30年代のウォール街は、29年の大暴落を経て、幾多の改革が進行していた。法改正、監視機関の設置、証券分析手法の進化などである。本書に描かれているのは、そこにうずまく欲望と恐怖に翻弄される、数知れぬ投資家と業者の人間ドラマだ。

 著者は、人々のあがきの姿から、証券市場が抱える構造的真実に迫っている。
 あらゆる証券リターンの源泉は、企業が生み出す付加価値に帰する。ところが、投資家がそのリターンをそのまま受け取るわけではない。投資家が得るリターンは、その付加価値から業者が受け取る金額を差し引いたものである。しかも、その業者が介在することで証券のリターンが高まるとはかぎらない。
 今日の証券市場は、少なくとも表面的には、当時とは比較にならないほど整備されている。しかし、その底流に流れる本書のメッセージは、単に「昔話」ではすまない真実がある。

 ヨットの逸話は、リターンは予測不能だが、コストは確実にかかるものであること、そして、そのコストは業者の手元に残り、それが彼らの富の源泉になっていることを読者に気づかせてくれる。

 インデックス投信の創始者、ジョン・ボーグルも『波瀾の時代の幸福論』(武田ランダムハウスジャパン)のなかで「金融市場から生まれるグロス(名目)リターンから金融システムにかかるコストを差し引いたものが、投資家が実際に得るネット(実質)リターンに等しい」と述べた。
 つまり「投資家は、投資という巨額のコストがかかる食物連鎖の底辺に置かれて、食い物にされる」と同様のことを指摘しているわけだ。個人投資家に適切な指針を与えるという意味で言えば、本書はかの名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著、日本経済新聞出版社)の先駆的な存在であるということもできよう。

 私自身が本書に出合ったのは、2005年に個人投資家向けの投資教育会社を創業したころ、出張先のサンフランシスコの本屋だった。すでにこの小話は幾度となく耳にしていたので「やっと見つけた」という思いで、気持ちが高揚したのを覚えている。
 私は常々、日本の個人が投資をするときの最大の問題点は「“販売会社の影響力”が、運用会社に対しても、そして投資家に対しても大きすぎることにある」と思っていた。まさに、この本に書かれているようなことである。
 以来、セミナーでは何回もこの話をさせてもらっている。

 今日、我々を取り巻く社会・経済環境は変わってしまった。もはや、自分の将来を国任せ、会社任せにしてはいられない。「将来の自分はいまの自分が支える」ほかないのが現実である。

 将来の生活リスクを回避するためには、長い時間をかけて、資産を適切に運用していく必要がある。そのときに重要なのが、誰かに勧められたものを買うのではなく「自分が最高責任者となって、司令塔になる」という姿勢だ。
 本書が主張しているのも、業者任せではなく「自分で判断する」ということである。いくら業者に推奨されようが、結局、その成果は投資家自身に降りかかるのだ。

 自分の将来を守るための投資に、深い専門知識はいらない。投資に関する「きほんのき」のみで十分だ。
 ただし、同時に、証券市場と業界の構造に潜む真実を理解することが必須である。
 ウィリアム・バーンスタインの名著『投資「4つの黄金則」』(ソフトバンククリエイティブ)でも、投資で成功するために学ぶべき分野として、理論、歴史、心理に加えて、業界構造の理解を挙げている。
 これは、ともすれば従来、無視されてきた分野である。だが本書は、その気づきを与えてくれる格好のテキストだ。

 70年の時を経て、この名著が日本語に訳されることは意義深い。そして、いま、私は二つの感慨を覚えている。
 ひとつは、この本が日本に上陸するまでに70年もの時を要したということである。なにやら、ようやく黒船が到着したような気さえする。
 もうひとつは、米国を中心とした業界構図への感慨である。もちろん、これまで幾多の改革があったのを否定するつもりはない。だが、70年を経てもなお、相変わらず「懲りない面々」が跋扈しているように思えるのは、私だけではあるまい。

 いま、長期低迷相場に悩まされる日本で、この本の翻訳を出すという企画を取り上げた出版社の見識に敬意を表したい。また、丁寧に翻訳された関岡孝平氏に心から感謝したい。この本の指摘することこそ、日本の株式市場が輝きを取り戻すためのもっとも抜本的な条件であろう。  本当の市場復活は、個人投資家の自立から始まると私は思う。
 読者のみなさまには「お客のヨットはどこにある?」という短いフレーズに、何度も思索をめぐらしていただきたい。資産運用を行ううえで貴重な、実践的な知識を得られること請け合いである。
 この本が、日本でも長く、多くの人に読まれ、証券市場の真実に気づき、自らが「投資の司令塔」になることの大切さを実感していただけることを期待してやまない。

 2010年11月

岡本 和久

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