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全天候型トレーダー

全天候型トレーダー
――バイ・アンド・ホールドの呪縛を解き放つ戦略

2024年4月発売/A5判 上製本 238頁
ISBN978-4-7759-7327-1 C2033
定価 本体2,800円+税

著 者 トム・バッソ
監修者 長岡半太郎
訳 者 山口雅裕

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目次 | 著者紹介

「ミスター冷静沈着」が伝授する成功への近道
正しくリスクと向き合う
どんな経済情勢や相場でも長期的成功に導く極意

 投資額の大小や投資経験の差に関係なく、リスクは投資家を破滅に追いやることがある。しかし、成功に至る多くの障害と同様に、リスクは正面から立ち向かうことでしか克服することはできない。

 リスクを避けるのではなく、リスクに立ち向かえるとしたら、どう行動するのが最善だろうか。リスクをとることでしか利益を得ることができないとしたら、どうすればよいのだろうか。投資で成功するには、まずリスクに対する考え方を変えることである。トレンドスタット・キャピタルの創設者であり、「ミスター冷静沈着」と評されるトム・バッソは、リスクを受け入れ、それを投資に役立てるための基本的な原理を本書で明らかにしている。本書では、ポートフォリオをどう組み、それをどう手直しすればよいかの洞察に加えて、大幅な分散投資、先物のトレードの利用方法、株式保有における革新的な考え方を学ぶことができる。

 彼自身の経験や成功の実例を交えながら、手痛い判断ミスを避け、包括的な戦略を立て、リスクをうまくとりながら、どんな経済情勢や相場つきでも長期的に成功を収めるための必要不可欠な枠組みが、初心者にも分かりやすく書かれている!


著者紹介

トム・バッソ(Tom Basso)
トレンドスタット・キャピタル・マネジメントの創設者で元社長であり、スタンドポイント・ファンドの会長。規律正しく冷静なトレード手法から「ミスター冷静沈着」と呼ばれている。12歳のときに新聞配達で稼いだお金で初めて投資信託を買い、それ以来、投資に魅せられてきた。著名なヘッジファンドマネジャーになったあとは運用のかたわら、株式、債券、オプション、コモディティ・先物、FXの専門知識で世界中の顧客をサポートしていた。ジャック・D・シュワッガーの『新マーケットの魔術師』(パンローリング)で紹介されたトレーダーの1人でもある。引退した現在は、トレード、経済、健康、ライフスタイルに関する教育を行っている。個人で行っているSNSは以下のようなものがある。X @basso_tom(https://twitter.com/basso_tom)、フェイスブック https://www.facebook.com/enjoytheride.world、リンクトイン https://www.linkedin.com/in/tom-basso-7786a01a3、Gettr @basso_tom、Truth Social @basso_tom、テレグラム @basso_tom、MeWe mewe.com/i/tombasso、Parler @enjoytherideworld、インスタグラム https://www.instagram.com/masobasso/。


目次

■立ち読みコーナー(本テキストは再校時のものです)

日本語版への序文
監修者まえがき
はじめに
第1章 完璧な投資とは
第2章 全天候型投資の哲学を作る
第3章 全天候型トレーダーとしての進歩
第4章 完全なトレード戦略とは何か
第5章 投資のタイミング
第6章 ポートフォリオをヘッジする
第7章 極端に幅広い分散
第8章 横ばい相場――相場に動きがないときにどうするか
第9章 「穴」を埋める
第10章 どのくらい売買すればよいのか
第11章 トレードの精神面
第12章 全天候型投資を始める
第13章 リターン・リスク・レシオを最大化する
第14章 よくある間違いを避ける
第15章 全天候型投資と未来
おわりに
著者のトム・バッソ(Tom Basso)について
トム・バッソのソーシャルメディア

日本語版への序文

 私たちが生きているエレクトロニクス時代はトレードにとって非常に多くの利点がある。私が投資を始めた1970年代には、注文を決めてそれを執行し、証券会社から約定したという連絡を受けるまで普通では30〜60分もかかっていた。今は、コンピューターで注文ボタンを押すと、一瞬でコンピューター画面に約定のメッセージが点滅する。大量のデーターが素早く流れるようになったことで、トレードの世界での私たちの動き方は劇的に変化した。

 データーが素早く流れるようになるとソーシャルメディアが発達し、トレードのさまざまなテーマについて多くの相場観が世界中に急激に広まるようになった。トレードが非常に頭を使う状況になった今、トレーダーはYouTubeのようなウェブサイトや人気のソーシャルメディアから押し寄せるデーターや相場観にどう対処すればよいのだろうか。

 本書では、この点について詳しく説明するが、最終的には、トレードで抱えている課題はトレーダーであるあなた自身で解決しなければならない。自分の状況やスキルや使える資金やリスク許容度に基づいて、理にかなった目標を設定することが成功のカギになる。それ以外のことをすれば不安を感じるようになり、やがてトレードプランをうまく実行できなくなって、失敗に終わる。

 だから、次にYouTubeでトレード関連のビデオを見たり、フェイスブックやXなどの投稿を読んだりするときには、「それは一個人の相場観であり、私は自分の状況に合った相場観を持つ必要がある」という言葉を繰り返し考えるようにしてほしい。「先週の高値は2019年以降の最高値だった」とだれかが言ったら、それは相場観ではなく事実であり、正しいか間違っているかのどちらかである。聞いたり見たりすることすべてを、事実なのか、その人の相場観なのかを判断するところから始めてほしい。事実に注意を払い、自分自身の相場観を作ろう。

 相場の予測をするのは絶対にダメだ! 私の好きな格言の1つに、「相場は自分の動きたいように動く」というものがある。相場はあなたの相場観には関心がないし、あなたの資金が数兆ドルでもないかぎり、どんなトレードをしようと気にもしない。あなたのやるべきことは、相場で今何が起きているかを判断し、それに反応して、常に自分の戦略の指示どおりに動くことだ。

 本書では、私自身のトレードにおける課題を解決するために考案したことをできるかぎり伝えている。みなさんが本書のどこかで特に役立つものを見つけてくれることを願っている。しかし、本書とそこで述べられたアイデアをそのまま、自分のトレードにおける課題の解決策にはしないでほしい。私はあなたの課題を解決しようとしたわけではない。私はトレードでの成功に必要と思うものを必死になって考案してきた。50年間トレードを続けてきて、私は自分で考案したものに満足している。それらはあなたの状況に当てはまるものもあれば、当てはまらないものもあるだろう。私はあなたではないし、あなたは私ではない。資金量も、コンピューターや数学の知識も、トレードの経験やリスク許容度も、トレードに伴う心理的プレッシャーに対処する能力もすべて違う。私と読者の方々はまったく違うのだから、みんなが同じようにトレードをすべきだと結論づけるのは理屈に合わない。そんなことはバカげている!

 トレードの核心はリスクにうまく対応することである。チャートのブレイクアウトで買うことも、移動平均線を見て買うこともできるし、コインを投げて決めることもできる。だが、ポジションを取るということは結局のところ、ポジティブなリスク(潜在的利益)を得るためにネガティブなリスク(潜在的損失)を負うということである。ソーシャルメディアで見かけるトレーダーのなかには、大儲けをするために特定の株や先物に集中投資することを支持する人もいる。しかし、それはカジノに行くのと同じことで、私はそういうやり方は好きではない。

 ジャック・シュワッガーは『新マーケットの魔術師――米トップトレーダーたちが語る成功の秘密』(パンローリング)で私のことを「ミスター冷静沈着」と呼んだ。私が長年かかって苦労して学んだ教訓の多くを応用すれば、あなたも自分なりの冷静沈着さを手に入れることができると思う。自分の状況に合った独自のトレードプランを作れば、楽にトレードができるようになり、トレードという「旅を楽しむ」ことができるようになる。

トム・バッソ


■立ち読みコーナー(本テキストは再校時のものです)

目次

日本語版への序文
監修者まえがき

はじめに
第1章 完璧な投資とは
第2章 全天候型投資の哲学を作る
第3章 全天候型トレーダーとしての進歩
第4章 完全なトレード戦略とは何か
第5章 投資のタイミング
第6章 ポートフォリオをヘッジする
第7章 極端に幅広い分散
第8章 横ばい相場――相場に動きがないときにどうするか
第9章 「穴」を埋める
第10章 どのくらい売買すればよいのか
第11章 トレードの精神面
第12章 全天候型投資を始める
第13章 リターン・リスク・レシオを最大化する
第14章 よくある間違いを避ける
第15章 全天候型投資と未来
おわりに
著者のトム・バッソ(Tom Basso)について
トム・バッソのソーシャルメディア


日本語版への序文

 私たちが生きているエレクトロニクス時代はトレードにとって非常に多くの利点がある。私が投資を始めた1970年代には、注文を決めてそれを執行し、証券会社から約定したという連絡を受けるまで普通では30〜60分もかかっていた。今は、コンピューターで注文ボタンを押すと、一瞬でコンピューター画面に約定のメッセージが点滅する。大量のデーターが素早く流れるようになったことで、トレードの世界での私たちの動き方は劇的に変化した。

 データーが素早く流れるようになるとソーシャルメディアが発達し、トレードのさまざまなテーマについて多くの相場観が世界中に急激に広まるようになった。トレードが非常に頭を使う状況になった今、トレーダーはYouTubeのようなウェブサイトや人気のソーシャルメディアから押し寄せるデーターや相場観にどう対処すればよいのだろうか。

 本書では、この点について詳しく説明するが、最終的には、トレードで抱えている課題はトレーダーであるあなた自身で解決しなければならない。自分の状況やスキルや使える資金やリスク許容度に基づいて、理にかなった目標を設定することが成功のカギになる。それ以外のことをすれば不安を感じるようになり、やがてトレードプランをうまく実行できなくなって、失敗に終わる。

 だから、次にYouTubeでトレード関連のビデオを見たり、フェイスブックやXなどの投稿を読んだりするときには、「それは一個人の相場観であり、私は自分の状況に合った相場観を持つ必要がある」という言葉を繰り返し考えるようにしてほしい。「先週の高値は2019年以降の最高値だった」とだれかが言ったら、それは相場観ではなく事実であり、正しいか間違っているかのどちらかである。聞いたり見たりすることすべてを、事実なのか、その人の相場観なのかを判断するところから始めてほしい。事実に注意を払い、自分自身の相場観を作ろう。

 相場の予測をするのは絶対にダメだ! 私の好きな格言の1つに、「相場は自分の動きたいように動く」というものがある。相場はあなたの相場観には関心がないし、あなたの資金が数兆ドルでもないかぎり、どんなトレードをしようと気にもしない。あなたのやるべきことは、相場で今何が起きているかを判断し、それに反応して、常に自分の戦略の指示どおりに動くことだ。

 本書では、私自身のトレードにおける課題を解決するために考案したことをできるかぎり伝えている。みなさんが本書のどこかで特に役立つものを見つけてくれることを願っている。しかし、本書とそこで述べられたアイデアをそのまま、自分のトレードにおける課題の解決策にはしないでほしい。私はあなたの課題を解決しようとしたわけではない。私はトレードでの成功に必要と思うものを必死になって考案してきた。50年間トレードを続けてきて、私は自分で考案したものに満足している。それらはあなたの状況に当てはまるものもあれば、当てはまらないものもあるだろう。私はあなたではないし、あなたは私ではない。資金量も、コンピューターや数学の知識も、トレードの経験やリスク許容度も、トレードに伴う心理的プレッシャーに対処する能力もすべて違う。私と読者の方々はまったく違うのだから、みんなが同じようにトレードをすべきだと結論づけるのは理屈に合わない。そんなことはバカげている!

 トレードの核心はリスクにうまく対応することである。チャートのブレイクアウトで買うことも、移動平均線を見て買うこともできるし、コインを投げて決めることもできる。だが、ポジションを取るということは結局のところ、ポジティブなリスク(潜在的利益)を得るためにネガティブなリスク(潜在的損失)を負うということである。ソーシャルメディアで見かけるトレーダーのなかには、大儲けをするために特定の株や先物に集中投資することを支持する人もいる。しかし、それはカジノに行くのと同じことで、私はそういうやり方は好きではない。

 ジャック・シュワッガーは『新マーケットの魔術師――米トップトレーダーたちが語る成功の秘密』(パンローリング)で私のことを「ミスター冷静沈着」と呼んだ。私が長年かかって苦労して学んだ教訓の多くを応用すれば、あなたも自分なりの冷静沈着さを手に入れることができると思う。自分の状況に合った独自のトレードプランを作れば、楽にトレードができるようになり、トレードという「旅を楽しむ」ことができるようになる。

トム・バッソ


監修者まえがき

 本書は、トム・バッソの著した“The All Weather Trader : Mr. Serenity's Thoughts on Trading Come Rain or Shine”の邦訳である。バッソは『新マーケットの魔術師』(パンローリング)で紹介されたトレーダーの1人で、その極めて冷静で落ち着いた性格とマーケットへの取り組みで知られている。

 本書のテーマである「全天候型運用戦略」は、近年注目を集めるようになった考え方の1つで、金融市場のさまざまな変化を前提として、どんな状態にあっても致命的な損失を被ることなく、長期的に安定したリターンを獲得することを目指すものである。

 バッソがアメリカ株を例に解説しているように、過去のパフォーマンスが良いといっても、現実にその経路で発生するドローダウンに耐えられる人はどこにもいないし、ましてや未来における再現性は絶対と言ってよいほどない。良さそうに見える単一の投資戦略だけに依存するのは危険なのである。だから、例えば、すべての投資資金をMSCIオールカントリーの投資信託に投入するなどというのは、極めて浅はかな行為と言わざるを得ない。その種の愚かな投資を薦める無責任な言説にはけっして耳を貸してはならない。

 現実に実行可能でモノの役に立つ全天候型の戦略は、優れたアルファ(超過収益)の探求・獲得によってではなく、堅実なリスク管理によってもたらされる。そしてその本質は、よく言われるように慎重を期してレバレッジを低くするというようなナイーブなものではなく、収益を稼ぐために本来とるべき本源的リスクをきちんととり、それが不可避的に伴う付随的リスクを極力ヘッジすることにある。本書で紹介されているアセットアロケーションとタイミングによる調整は、その代表的な方法の1つである。

 一般的に投資がうまくいかない原因は、過大にリスクをとることではなく、単にリスクをとらないことにある。それはちょうど、アクセルを全然踏んでいないのに「この車は遅い」と文句を言うようなものだ。多くの投資家は、優れた投資戦略やトレード手法を青い鳥のように熱心に追いかけるが、まともにリスクをとることは関心がない。だが、それではやるべきことが逆だ。投資家は適切なリスク管理を覚えたうえで、まず限界までリスクをとるべきだ。優位性のあるアノマリーなど見つけなくても、ほとんどの投資家の目的は単純なリスクテイクだけで十分に達成可能である。賢明な読者にとって、本書はリスク管理を理解する良い導入となるだろう。

 翻訳にあたっては以下の方々に心から感謝の意を表したい。山口雅裕氏はいつもながら丁寧な翻訳をしてくださった。阿部達郎氏は丁寧な編集・校正を行っていただいた。また本書が発行される機会を得たのはパンローリング社社長の後藤康徳氏のおかげである。

 2024年3月

長岡半太郎


■はじめに

 ちょっとした行動にもリスクはある。通勤時の運転や道路の横断、なんとなく一度に複数の作業を進めているときなど、日常よくすることを思い浮かべてみよう。これらは一見すると危険ではないかもしれないが、深刻な結末に至ることもある。

 リスクはどこにでもある。自分の幸福についてであれ、懐具合についてであれ、人生におけるそのほかの重要なことについてであれ、リスクはある。リスクは避けられず、いずれそれに直面する。

 リスクは避けられないため、恐怖に駆られても当然だ。投資の世界は延々と続く恐怖に覆われてきた。リスクは一見するとハイリスク・ハイリターンに見える資金運用の分野に足を踏み入れようとする人々に不安を植え付け、障害を作り出してきた。

 過去50年間に金融市場で何が起きたかを振り返ってみよう(図表1)。

 これらの出来事は世界中の家庭に災難をもたらし、短期間に全財産を失う人も現れた。立ち直れないほどの大損を被った投資家もいた。友人や家族がこうした悲惨な出来事に襲われるのを目にしたトレーダーは心理的な影響を受けてきた。こういったことが何十年も続いている。

 私はこれを直接、経験し、投資家がどの市場に投資しようとリスクは負うのだと痛感した。私は、父がこんな経験をするのを実際に見ている。父のカルロ・バッソはアメリカ郵便公社の郵便配達員という恵まれた仕事に就いていた。大恐慌を経験したイタリア人の両親のもとに生まれた父にとって、年金をもらえる安定した仕事に就くことが最大の望みだった。この感情は彼と同世代の多くの人に共通していた。彼らは株式市場をカジノと見ていた。つまり、配られた手すべてが大金になるか、チップの山をすべて失うかのギャンブルと見ていたのだ。そんなものに賭けるよりも、着実に得られる給料と福利厚生と退職金制度を信頼していた。

 カルロ・バッソにはもっと望みがあり、投資をしたいと考えていた。しかし、ギャンブルに手を出したいとは思っていなかった。もっと安全で、変動が小さいものに投資をしたいと考えていた。父は貯蓄に回すつもりのお金を、当時最も安全な投資先と考えられた地元の貯蓄貸付組合(S&L)のCD(譲渡性預金)に預けた。貯蓄貸付組合への投資は低リスクだった。彼は不動産や変動が大きい株式市場に投資したわけではない。父は自分がリスクとみなしたものをすべて取り除いて、安全な道を選んだ。

 その直後の1980年に短期金利が長期金利を上回って、預金金利が貸出金利を上回る逆ザヤ状態になると、貯蓄貸付組合の破綻が相次いだ。政府による2000億ドルの救済措置が取られたあと、これらの投資はほぼ早期償還がなされたため、投資家は損失の多くを取り戻すことができた。幸いなことに、父は郵便局での仕事を続けていたので、家族と育ち盛りの3人の子供たちを養い続けることができた。

 貯蓄貸付組合の破綻が相次いだとき、私たち家族は少数の幸運者だったが、ほかの人々はそれほど幸運ではなかった。大恐慌やブラックマンデーや新型コロナウイルスの流行など、株式相場のよく知られた暴落でも同じことが言える。ほんの一握りの人々は運が良かったり抜け目がなかったりしたが、多くの人はそうではなかった。父が貯蓄貸付組合の危機に直面したことで私が得た教訓は、最も安全と思われるものに投資しても、本当にリスクのない投資などないということだった。事態は一瞬で変わることもあるので、1つの投資先にほれ込んでそこにすべての資金を投入すれば、そのポジションが一気に逆行した場合、大きな損失を被りかねない。当時の私は分散投資やリスクに立ち向かうことの力についてあまり学んでいなかったが、それがマネーマネジャーとしての私の将来のキャリアの核になった。

 長年にわたって他人の資金を運用してきて学んだことは、どんなトレーダーもリスクから逃れることはできず、必ずリスクに直面するということだった。リスクに備える唯一正しい方法は、リスクから逃れようとするのではなく、リスクに正面から立ち向かうことだ。本書では私が学んだ、リスクに立ち向かって、その過程で利益を得る方法をいくつか紹介する。これらの考え方はすべてシンプルなので、そのコンセプトを取り入れたり自分のポートフォリオに合うように修正したりできるし、ポートフォリオのパフォーマンスを向上させ、全天候型トレーダーになるための新しい方法を考案することもできる。

投資家かトレーダーか

 あなたは「長期で投資をしている」ので、自分は投資家だと思っているかもしれない。私は実際に何度もこの言葉を聞いたことがある。だが、資金を運用しようとしているみんなに伝えたい。私たちはみんなトレーダーなのだ! いつか売るつもりで買うのはトレードである。だから本書では、金融市場で取引するという課題に取り組む人をすべて「トレーダー」と呼ぶことにする。

用心深いか挑戦的か?

 あなたは自分を用心深いトレーダーか挑戦的トレーダーのどちらかだと思っているかもしれない。しかし、私は別の考え方をしたい。父は自分を「用心深い」と思っていたが、結局はそうならなかった。彼はリスクをとっていたし、そのリスクは表面化した。だから今後のトレードでは、リスクを減らしながら、リターンを向上させることを目指してほしい。そうすれば、用心深いトレーダーである必要も挑戦的トレーダーである必要もない。それはほかならぬ自分自身のポートフォリオを運用する独自の方法になる。

ポートフォリオの資金が多いか少ないか

 あなたがポートフォリオで運用している資金はまだ少ないかもしれない。ひょっとすると、数千ドルをかき集めて、トレードを始めたばかりかもしれない。私は1974年に2000ドルの信用取引口座から始めたことを今でもよく覚えている。私がトレンドスタット・キャピタルのマネーマネジャーだったとき、私とスタッフは6億ドルを運用していた。

 本書の考え方を実行する場合、巨額の資金でのほうがやりやすいかもしれない。しかし、このコンセプトを少額の資金に適用できないというわけではない。本書では、10万ドルや100万ドル、場合によっては1000万ドルという大きくて切りのよい金額のポートフォリオを例としてたくさん用いたが、これは説明を、数学的にシンプルで理解しやすくするためだ。ほとんどの人がそこまで多額の資金を運用していないことは分かっている。私はこれから説明する全天候型というコンセプトがいかに効果的かを示そうとしているだけだ。このコンセプトはポートフォリオの規模に関係なく、だれでも使える。

 少額のポートフォリオは、私が「粗さ」と呼んでいることに悩まされる。つまり、このコンセプトを使う場合、少額のポートフォリオでは多額のポートフォリオほど完璧な予測ができないのだ。統計的に言えば、結果は当たり外れが少し大きくなる。トレードでの粗い結果は、テレビの画面にさまざまな黒い点が現れる粗い画像に例えられる。つまり、トレードのサンプル数が多ければ、コンセプトは統計的にうまくいくが、サンプル数が少ないと、うまくいかない可能性が常にあるという意味だ。サンプル数が多いほど、またポートフォリオが巨額であるほど、コンセプトを適用するときに「粗い」結果になる可能性は低くなる。

 これは世論調査に似ている。10人に質問をして、6人がある傾向を示し、4人が異なる傾向を示せば、私は彼らの傾向をほとんど知ることができない。しかし、1万人に世論調査をして同じ質問をすれば、彼らの傾向についてあまり粗くない答えが得られる。7263人がある傾向を示し、2737人が別の傾向を示した場合、その結果はこの大きなサンプル数での傾向を正確に表していると確信できる。どちらのサンプル数でも結果は得られるが、サンプル数が多いほうが粗さが少なくてより正確だ。

 少額から始めるのならば、ポートフォリオの金額を増やすことから挑戦しよう。本業をもう少し頑張り、節約できるところは節約して、そのお金を取引口座に追加してほしい。健全な全天候型の手法を駆使してポートフォリオの金額を増やそう。こうしたことをコツコツと続けていけば、いつか数百万ドルを運用しているかもしれない。

HeかSheか

 私のウェブサイト(https://enjoytheride.world/)の統計によると、フォロワーやサイトの訪問者の80%以上が男性だ。女性からもときどき質問を受けるが、トレードをする人はまだ圧倒的に男性が多いようだ。そこで、効率的にするために、トレーダーを指すときは「He」を使うことにする。男性であろうと女性であろうと、あるいは最近世の中に存在するほかの性別であろうと、これはトレードをしている人を指していると思ってほしい。

資金運用での消えない問題

 資金運用の状況は数十年前とは大きく異なっている。私は半世紀にわたって相場を研究してきたが、最近は投資家の行動に劇的な変化が見られる。テクノロジーの進歩によって、相場が刻々と変化するのを見ることができるようになった。これはボラティリティを分単位で測れるということを意味する。トレーダーは良くも悪くもこうした乱高下を経験する。トレーダーは実際にパニックに陥り、しかもそれはあっという間に起きる。  トレードで大切なのはリスクを軽減することだ。相場の条件ではなく、自分自身の条件に合わせて闘いの場に行けるように、リスクに立ち向かってほしい。これが私の言う「全天候型トレーダー」である。

全天候型トレード

 主要な株式市場は変動が大きい。それでも、ほとんどの個人投資家はここに資金を投じたがる。理由は簡単だ。株式は分かりやすくて、すべてのメディアの注目を集める。また、多くの場合、株式は流動性が高いので、何十億ドルもの資金をある銘柄から別の銘柄に簡単に移すことができる。多くの人は、株式投資はリスクが高い分、高いリターンが期待できると考えている。私がトレンドスタット・キャピタルを運営していた時期にほぼすべての顧客が望んでいたのは、右肩上がりの滑らかなエクイティーカーブ(純資産曲線)だった。

 しかし、常に相場の正しい側にいることは不可能なので、損失をゼロにすることはほぼ不可能だ。どの日や週に何が起きるかを予測できる人がいるとは思えない。どの市場でも、大半の期間で大多数のトレーダーをいつの間にか勘違いさせる。しかし、リスクや想定できる損失をチャンスと考えることで、全天候型投資手法にとって適切な心構えを持つことができる。リスクに立ち向かうことで不運な日を減らすことはできるが、それでも不運な日をなくすことはできない。それはトレードに挑戦するときには避けられないところなのだ。

 全天候型トレーダーは相場で生じるボラティリティの多くをヘッジしようとする。そのため、当然ながら私はボラティリティについてたびたび触れる。ハイテク企業や新規上場企業の株価や暗号資産などの分野は大きく変動するので、ボラティリティについて話すことはたくさんある。全天候型トレーダーはボラティリティを避けるのではなく、うまく利用する。カウボーイが野生馬を手なずけて立派な使役馬にしようとするように、全天候型トレーダーはボラティリティがどこで生じるかや、それをどのように積極的に利用すれば口座資金のボラティリティを下げることができるかに焦点を合わせる。彼らはリスクを避けて、「用心深い」投資に伴う低いリターンに甘んじようとはしない。

 全天候型トレーダーは株式もどの特定の市場も排除しようとはしない。実際、彼らはリターンが得られそうなところなら、どこででもリターンを得ようとする。トレードに対するこの哲学はすべての投資対象に当てはめられ、戦略的に複数の国や大陸の資産に分散させることで、どんな経済状況になってもリターンを得られるようにする。

 これは私が繰り返し実践して、成功してきたトレード哲学だ。昨日、思いついて実行に移したものではない。私はトレードに長い間取り組んできた。開発、調整、実行には時間がかかったが、このコンセプトは私にとってうまく機能し、長期にわたって安定して一貫した結果をもたらすと同時に、冷静に考えることができるようになった。

 「楽に儲かる」方法はない

 マネーマネジャーは顧客から聞かされる決まり文句を十分に承知している。

 最小限のリスクで大きなリターンを上げてほしい。

 この普遍的な投資目標は今日の多くの個人投資家の頭にこびりついているようだ。現在のテクノロジーを使えば、これが可能であるように思えるからだ。素晴らしいリターンを公開する人々やどの企業が次のアマゾンになるか知っていると自慢する自称専門家がソーシャルメディアで紹介される今日の世界では、人々はごく普通に、そんな大儲けができると考える。

 しかし、現実の投資の世界では、リスクはどこにでもある。必ず儲かる銘柄など存在しないし、どの投資が損失をもたらすかを特定できる人はいない。リスクとリターンにはある関係が存在し、リターンを得るためにはリスクをとる必要がある。

 全天候型のトレードプランを作れば、次に何が起きるかを心配することなく、あなたが求めるリターンを追求することができるし、ミスター冷静沈着のように夜もぐっすり眠ることができると私は信じている!

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