著 者 デボラ・ウィアー
監修者 長岡半太郎
訳 者 藤原玄
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原題 Timing the Market : How to Profit in the Stock Market Using the Yield Curve, Technical Analysis, and Cultural Indicators
by Deborah Weir
第1部 イールドカーブ分析
第1章 投資の世界の謎を解く
第2章 大雑把な予測モデル
第3章 マネーマーケットは重要
第4章 事前警告となる長期債
第5章 株式市場の期待リターン
第6章 債券の信用スプレッド
第7章 FFレート
第8章 イールドカーブ分析のまとめ
第2部 テクニカル分析
第9章 市場の幅――ダウ平均の値上がり銘柄数
第10章 VIX
第11章 プット・コール・レシオ
第12章 移動平均線
第13章 移動平均線を利用する――MACD
第14章 レバレッジ――空売りとマージンデット
第15章 テクニカル分析のまとめ
第3部 社会的指標
第16章 女性の美しさの変化
第17章 人口統計
第18章 企業支出
第19章 戦争と戦争のうわさ
第20章 社会的指標のまとめ
第4部 投資対象を選ぶ
第21章 アセットクラス
第22章 投資信託
第23章 ETF
第24章 銘柄選択
第25章 総括
第5部 資本主義の現場
第26章 ウォール街のとんでもない物語
第27章 神よ、アメリカに恵みを与えたまえ
付録と出所と参考文献
本書は、機関投資家や富裕層向けに資産運用および資産配分サービスを提供するグリニッジ・コンサルティング社の社長(原書発行当時)であるデボラ・ウィアーによる『Timing the Market : How to Profit in the Stock Market Using the Yield Curve, Technical Analysis, and Cultural Indicators』の邦訳で、株式市場の長期的な騰落について、イールドカーブ(利回り曲線)の形状をはじめとしたさまざまな先行指標を用いてその変動を説明し、売買タイミングの計り方を示したものである。
一般に広く読まれている投資書籍の多くが、「市場のタイミングを計るべきではない(マーケットタイミング戦略は不可能だ)」と解説しているなかにあって、本書のように「積極的にタイミングを計って利益を拡大すべきだ」と推奨する存在は極めて貴重である。原著の発行からすでに20年以上が経過しているにもかかわらず、今なお多くの読者に支持され、こうして邦訳が世に出るに至ったという事実が、本書の内容が歴史の検証に耐えてきたことを示している。
本書で取り上げられた多種多様な指標のどれが実際に有効で、どれがそうでないのかについては、ここで私が先回りして結論を述べるような無粋な振る舞いは慎むべきであろう。読者の方々が自ら考察し、検証する楽しみを奪うべきではない。しかし、第1部で展開される「金利の変化が株価の変化に先行する」という主張は、いつの時代であっても妥当で信頼に足る考え方である。正確に言えば、金利は株式の理論価値を決定する直接的な説明変数であることに加え、中央銀行の政策や経済状況に応じて金利が変化し、その影響が実体経済に波及するより前に、株式市場が未来を織り込んで反応するのである。
さらに、金利(債券)は株式市場の先行指標であるだけではなく、それ自体をトレードすることも可能である。実際、ここ数年間において、日本の債券先物は私にとってもっとも楽に、そして、安心してトレードできる金融商品であった。企業のファンダメンタルズを反映するだけでなく、人々の感情や資金管理の事情(需給の歪み)によって乱高下する株式市場とは異なり、金利(債券)の価格は極めて合理的に決まり、その値動きは多くの場合において冷静である。理詰めでトレードすることを好む投資家にとって適した市場であると言える。
また、第2部で詳述されるテクニカル指標については、著者が説くようにコントラリアンとしての立場から利用するのが望ましいだろう。世間一般の常識とは裏腹に、株式市場とは常に冷静な少数派が有利な場所である。参加者がそれぞれ独立して意思決定を行っている世界(ばらつきが大きい状態)では、その集合知はおおむね正しいが、多くの人々が同じ情報を見て同じように行動するときには、大きなチャンスが生まれるのである。
第3部の社会的指標のなかでは、戦争に関する記述だけでも、本書を読む価値は十分にあると申し添えておく。
本書の刊行にあたり、翻訳者の藤原玄氏、編集者の阿部達郎氏、そして本書を世に送り出してくれた後藤康徳氏に深謝する。
2026年6月
株式市場で利益を得る最良の方法は天井と底を見定め、勇気をもって売買することである。本書ではその目標にできるかぎり近づく方法を説明する。
本書は、ストレスを軽減しながらリターンを増大させ、株式市場で利益を上げたいと思っている投資家に向けたものである。経験値の差はあってもあらゆる投資家が公開情報とシンプルな計算を用いてこの目標を達成しようとする。(中略)
このようなウォール街で実践されていることをまとめた本は今までなかった。プロのファンドマネジャーや世界中の抜け目ない投資家たちは、この知恵を友人や家族や顧客たちの地下ネットワークで伝えている。(中略)
本書は、私が長年にわたり利用している投資要件のリストから生まれたものだ。私自身が用いるそれらのアイデアをまとめたものが本書である。これらのマーケットタイミングのベンチマークはウォール街では広く実践に用いられているが、これまで本になることはなかった。世界中の成功している証券会社や資産運用会社で休憩中に共有されている共通認識なのだ。
これら投資にまつわる知見は3つの形を取り、本書ではそれぞれを1つの部にまとめている。本書では十分な知見を持つ経験豊富な投資家が説明を飛ばして読めるように、それぞれの部の最後にまとめの章を記している。
第1部はイールドカーブ分析で、本書の中核である。クリーブランド連銀は国債のイールドカーブの形を景気予測に役立てている。何百万もの投資家がイールドカーブを用いて株式市場を予測している。これは最も強力で、最も広く用いられている指標の1つである。
第2部のテクニカル分析は投資家の強欲と恐怖の水準を測るものである。これはフロイトの大衆心理に関する考察に基づいた行動心理学の応用である。テクニカル分析を大衆の感情を評価するいくつかのベンチマークに簡略化している。そして、われわれは群集心理の影響を利用して利益を得ることができる。
第3部の社会的指標では、なんとしても計算を避けて右脳で考える人々向けに経済と株式市場を分析している。世界には環境を把握する方法を知っている直感的な投資家がたくさんいるし、エコノミストも逸話に基づく証拠を用いて考えることが多い。
認識しているかどうかにかかわらず、おそらくわれわれは大きな投資判断を下すときにはこの3つの知見から結論を導き出している。
本書の最初の3つの部では図1.1に示した売りと買いの判断能力を開発し、読者が独立した投資家として自分自身で継続的に判断を下せるようにする。
第4部では株式市場でのタイミングの判断を具体的な投資対象に適用する。皆さんがどれだけの準備をしたいか、どれほど攻撃的かに応じてインデックス運用の投資信託を用いることも、個別銘柄にレバレッジをかけることもできる。
もちろん、レバレッジはすでにボラティリティの高い市場にさらなるリスクをもたらす。そして、過去のパフォーマンスは必ずしも将来を示すものではない。本書では正確を期すためにあらゆる努力をしているが、何も保証できない。
第5部では資本主義の仕組みを説明する。人類は有史以来、市場で取引することで自分の経済的・社会的立場を改善しようとしてきた。人々がいかに危険極まりない投資に魅了されてきたかが分かる物語もあれば、素晴らしい成功を収めた物語もある。最後の2章では、資本主義経済に生きるわれわれが利用できる機会にまつわる最も大胆で、最も魅力的な物語をお伝えする。
経済的な安定を得るためには、株式市場のタイミングを計って利益を得る方法を学ぶ必要がある。自分のポートフォリオを守り、増大させられるのは唯一、自分だけである。重要なのは市場のボラティリティを自分の利益につなげることだ。2000年のバブル崩壊で損をしたとしたら、そのお金を取り戻す必要がある。損失を取り戻す唯一の方法は次に市場が大きく変動するタイミングを正確に捉えることだ。大きなポートフォリオが必要となるような将来を夢見ているのなら、適切なタイミングで売買をして利益を得る必要がある。次なる市場の動きは並外れたものとなり、世界経済に影響を及ぼすかもしれない。
皆さんは自分自身で富を築き、自分の運命を創造できるようになる必要がある。
チャールズはちょうど株式市場が天井を付けた2000年に結婚した。サリーが自分の家を持っていたので、彼は彼女のもとに引っ越し、自分の家は空き家にしていた。彼の友人たちは、不動産を売却したり賃貸に出して、グロース株に投資しない彼を嘲笑った。彼の新しい義理の父親は彼の家をザ・エスケープ・ハッチ(緊急避難口)と名付けた。
チャールズは数年の間、彼らのからかいを無視した。その後、彼は友人たちが株式市場が暴落したあとで自分たちのポートフォリオを再建しようとするのを眺めていた。彼は友人たちが貯蓄ができるように副業を始めるのを眺めていた。友人たちが生活費を切り詰めるために小さなアパートに引っ越す一方で、彼の家の価値は2倍になった。チャールズは不動産市場の高値付近で家を売却し、その資金を値下がりした株式に投じた。S&P500は彼が結婚したその日よりもまだ低かった。
チャールズはまるで投資の世界のロードマップを持っているかのようだった。ほとんどの人々がそのような手引きを欲しがるだろう。経済が拡大しているのか縮小しているのか、株式市場の方向性はいつ大きく変化するのかを知る必要がある。また、不動産をいつ買ったり売ったりするべきか、新しい企業をいつ立ち上げるべきか、もしくは安定した職に留まるべきかを知ることは価値がある。自分たちが景気や投資のサイクルのどこにいるのかが分かれば、人生の大きな判断のすべてはより簡単で、生産的なものとなる。とりわけ、株式市場でいつ買い、いつ売るべきかを知る必要がある。
われわれは1960年以降の投資判断を踏まえたロードマップを作成する(図P.1)。われわれは、イールドカーブ分析とテクニカル分析と社会的指標に基づいたこのロードマップが有効である理由を理解することになる。個々の章で1つのツールの議論を完結させている。そうすることで、本書を好きなだけ読み進めることも、最小限に抑えることもできる。それでも投資スキルは改善できるだろう。各章に記載したウェブサイトで独自に経済や株式市場を予測するために必要なデータが入手できる。本書を読み終えるときには完全に自立した投資家になっているだろう。
市場をしっかりと理解できるようになるので、その価値が2倍になるまでエスケープハッチを手放さなかったチャールズと同じように信念を貫く勇気が持てるようになる。
まずは、いくつかの曲線に注目することで投資の世界の謎を解いていこう。
私が通った大学院の安全性分析の教授が次のように言った。「常にファンダメンタルズ分析を利用しなさい。ファンダメンタルズにこだわるのです。けっしてファンダメンタルズの安全性分析から逸脱してはいけません」
彼がこの話題をダラダラと話せば話すほど、私はファンダメンタルズ分析ではない別の重要なことに興味を持つようになった。もちろん、彼はわれわれがその魅力に打ち負かされるのを恐れてその悪魔の名前を教えてはくれなかった。もちろん、株式チャートに頭と肩を描き出すテクニカルアナリストのことは聞いたことがあった。私は、彼らが教授が愛するファンダメンタルズ分析の脅威だと考えるほど真剣に受け止めたことはなかった。だが、テクニカルアナリストをかなり真剣に受け止めた人々もいる。
チャート分析
私のチャート分析との最初の出合いは、いまではドイチェバンクの一部となったスカッダー・スティーブンス・アンド・クラークの最高のファンドマネジャーの1人によるメモ書きだった。彼はいつもどおり、カジュアルエレガンスの装いで私のオフィスに立ち寄った(スカッダーの株式ファンドマネジャーはみすぼらしい債券のファンドマネジャーとは好対照で、みんなカジュアルエレエレガンスな装いだった)。エドは16%の利回りを生む素晴らしい国債を求めていた。市場は変動し、利回りは低下していると言うと、彼は次のように言った。
「まったく問題ない。2回目の買いのチャンスは常にある」。彼の声は自信に満ちていたので、私は彼には別の情報源があると思った。
心の奥底で何かがクリックされ、私はテクニカルアナリストたちが市場が方向性を変えるときにダブルトップとダブルボトムの議論をするのを思い出した。わが国の債券市場も間違いなく方向性を変えていた。壊滅的なまでに高い金利がやっと下落し、経済は復活しようとしていた。だが、数カ月後、債券の利回りは再び16%となり、エドは私のオフィスにやってきて、その債券を目いっぱい買った。私は、このテクニカル分析と呼ばれる金融の継子には何かあるのかもしれないと思い始めた。
テクニカル分析
株式市場のバブルが崩壊した後の2002年にコネチカット州のグリニッジ・カントリークラブで開催されたスタンフォードCFAソサイエティの会議に話を移そう。人々はナスダックで資金の80%を失い、株式市場のタイミングを計る方法を探していた。プルデンシャル・セキュリティーズのチーフ・テクニカル・アナリストで、マーケット・テクニシャンズ・アソシエーションの創設者のラルフ・アカンポラがテクニカル分析に関する講義を行った。彼は、テクニカルアナリストはファンダメンタルズの経済分析ではなく有価証券の価格を用いて投資判断を下すと語った。聴衆の1人が当時45年来の高値を付けていた債券を買うべきタイミングかどうか尋ねると、アカンポラは上品な金色の椅子のうえに立ち、天井を指さして、こう叫んだ。
「債券は安くない」
聴衆は歓喜の声を上げ、毎年彼を招待するようになった。最小限の計算でできるテクニカル分析の入門書として、アカンポラの魅力的な著書『メガ・マーケット 歴史が教える長期上昇相場の到来』(ダイヤモンド社)を読むとよい。
テクニカル分析の極めたければ、マーケット・テクニシャンズ・アソシエーション(現CMTアソシエーション https://cmtassociation.org/)に問い合わせれば、彼らが提供する講習や資格を確認できる。
行動ファイナンス
テクニカル分析がより一般的になったことで、行動ファイナンスの要素が取り入れられるようになった。著書『行動ファイナンスの実践 投資家心理が動かす金融市場を読む』(ダイヤモンド社)の面白いまえがきで、ジェームズ・モンティアは投資と行動主義との心理学的なつながりを説明している。彼の研究の基礎には、私の教授が愛したファンダメンタルズの経済学が完全に誤りだという考えがある。モンティアは、人間は合理的ではなく、そのため、伝統的な経済学の教義は精査に耐えられないと述べている。モンティアやその他行動ファイナンスの支持者によれば、人間は不合理で、金融市場を左右するあらゆる感情に過剰反応する。
モンティアは、感情的な過剰反応に関する最初の論文であるジグムント・フロイトの『グループ・サイコロジー・アンド・ジ・アナリシス・オブ・ジ・エゴ(Group Psychology and the Analysis of the Ego)』を読んだのかもしれない。フロイトの論文はその題名が示すよりも面白い。これは1884年に『オン・コカイン(On Cocaine)』を書いた同じ人物なので、彼が大衆の行動は「下品」であり、大衆は制限がなくなることを喜び、その経験を「楽しい」と感じるのだと説明していても驚くべきではない。彼が、その点で大衆と指導者との関係は性的なものだと説明しているのも不思議ではない。
われわれは群集心理から自分たちを守る必要がある。第2部では、投資をしている群衆の感情的な体温を計り、この特定の群衆から身を守る方法を示していく。
真夜中に電話が鳴った。悪いニュースであることは分かっていた。宝くじに当たり、賞金を山分けしたいからと真夜中に電話をかけてくる者などいない。家族も会社をクビにでもならないかぎり、出張中の私に電話をかけてくることなどない。今回も例外ではなかった。
私にとっては娘同然の姪のエリザベスはアメリカでも最もシクリカルな業界で働いていた。広告業である。彼女の母親は出産時に亡くなっていたので、私はいつも彼女に対して責任を感じており、景気後退の初期に彼女が失職するたびにお腹を殴られたように感じていた。もちろん、経済の回復期に彼女が新しい職を得れば大喜びし、彼女の魅力的な新しいキャリアを一緒に計画して楽しんでいる。エリザベスは私にとって天からの恵みの1つだ。また、彼女は私にとって経済と株式市場の最高の指標でもある。彼女のキャリアは私を引き付ける社会的指標の典型であり、嫌でもトレンドの変化を意識させられる。
イールドカーブが形を変え、テクニカル分析が市場の新しいトレンドを示すことがある。だが、われわれは目にしているものを信じることはできないことがある。このような指標が真実を語っていることは心底分かっている。だが、簡単にお金を稼ぐという夢を捨てられず、深刻な景気後退期に勇気をもって投資できないこともある。われわれを取り巻く社会が示すシグナルに頭を殴られる必要があることもあるのだ。
そして、われわれのなかには右脳を使って会計士には捉えられない真実を明らかにする詩人もいる。多くの人々はイールドカーブやMACD(移動平均収束拡散法)、ウォール・ストリート・ジャーナルを読まなくてもうまく投資している。私は大学院のある教授が経済学の講義で語った話を思い出す。それは、経済予測はわれわれが研究している定量的な方法論とは無関係かもしれないということだった。
小さな銀行の所有者たちは経済予測のためにコンピューターを導入して近代化を図ることにしたようで、ベテランのエコノミストを解雇した。1年後、彼らはエコノミストに戻ってきてくれるように頼んだ。なぜなら、コンピューターは経済の変化を正確に予測しても、変化率は大間違いだったからだ。経済は回復するとコンピューターが判断しても、予測する経済成長は直線的で、実際の経済の回復とはかけ離れていた。
ベテランのエコノミストは銀行での仕事に戻れることをとても喜び、彼の成功の秘訣を銀行の頭取に教えた。彼はデスクの一番上の引き出しを開け、彼の妻の洋裁道具の1つを取り出して頭取を驚かせた。それは、パターンメーカーがアームホールに合う袖の最上部をデザインするために用いるS字型の道具だった。その定規は底部が緩やかに上向きに傾斜し、側面は鋭角に曲がり、また緩やかな曲線を描いている。アームホール用の定規は、経済が方向性を変えるときと同じ曲線を描いていた。私の教授は、経済予測をするときは芸術性をもってコンピューターを補完するように提言した。
コンピューターをまったく使わない人もいる。私の友人はイールドカーブ分析もテクニカル指標も用いず、ただ自分の周りを観察するだけでお金持ちになった。サムは、冷蔵庫やコンピューターや最終製品に付ける金属製の名札を製造している。彼の顧客の1人はこのような名札の注文を増やし続けていた。サムは、顧客の会社が1980年代に上場するとすぐに投資し、世紀が変わる前に顧客の名札の注文が減少しているのを見て売った。サムは、市場が暴落する直前に売ったのだ。彼が投資したサン・マイクロシステムズはその価値の95%を失った。
数値を見ず、経済紙を読まずに成功する人もいる。サムのように投資をするときに社会的指標を読み取る方法を知っている人もいる。最高の投資家は、市場のタイミングを計るためにイールドカーブ分析とテクニカル指標と社会事情を組み合わせる方法を知っているかもしれない。
第3部では、メディアが理想とする女性の美しさ、人口統計、企業支出、戦争がどのように経済の拡大と景気後退、そして株式市場の天井と底を見定める役に立つかを見ていく。
資本を投じる前に、自分の投資目的とリスク許容度を評価したいと思うかもしれない。ポートフォリオを複数にして、それぞれの目的に合わせた名称を付けて、目的をはっきりさせておく人もいる。
第4部では引き続き、トップダウンの方法論を用いてポートフォリオを構築する。まずは主要なアセットクラスに目を向け、景気循環のなかで資金がどのように流れるかを観察する。次に、投資信託、特定の有価証券、デリバティブを検証する。
これら3つの投資対象は順番にリスクが高くなり、それが相応しい投資家の種類も、彼らの人生における段階もさまざまである。大学の学費や引退後の蓄えといった保守的な口座では第22章「投資信託」を採用したいと思うかもしれない。第24章「銘柄選択」は成長型ポートフォリオに向いているかもしれない。その章の最後に最も攻撃的な投資対象を取り上げる。オプションと先物である。経験則に従えば、このようなデリバティブは満期日や納会日には無価値になる可能性があるので、失ってもかまわない資金を投資すべきとなる。言わずもがなだが、空売りやデリバティブによる損失は無限大となる可能性がある。
われわれのモデルポートフォリオのアロケーションを変化させたいと思うかもしれない。1つのアセットクラスを別のアセットクラスに入れ替えるのは相応しくないかもしれない。S&P500をバイ・アンド・ホールドし、景気循環を通して現金や債券や実物資産や為替で小さな調整を行う基本ポートフォリオのほうが安心かもしれない。
プロのファンドマネジャーの多くはこの基本的な方法論を用いている。年金基金や大学寄付基金を運用しているならば、資産を守り、増やす法的責任を負っているだろう。彼らは、個々の投資対象に一定の割合をアロケーションし続けることで、この2つの責任を果たす。通常、1つのアセットクラスが利益を生むと、保有銘柄の価値は求められるアロケーションよりも大きくなる。すると、彼らは利益を生んでいる資産を売り、求められるアロケーションを下回っているアセットクラスを買う。1987年の夏の後半、市場が上昇して株式ポートフォリオがガイドラインを超えてしまったことで、ゼロックスや幾つかの州の年金基金は株を売った。彼らはアセットアロケーションをガイドラインに戻すために株を売り、債券を買ったのだ。このリバランスで彼らは暴落の直前に株のイクスポージャーを下げられた。
イールドカーブやテクニカル分析や社会的指標で変化が迫っていることが分かれば、このポートフォリオのリバランスもやりやすくなる。
では、われわれのポートフォリオのリターンを改善できるように、主要なアセットクラスとそのなかの有価証券に目を向けてみよう。
第1部 イールドカーブ分析
――いくつかの曲線で投資の世界の謎を解こう第2部 テクニカル分析
――債券市場も間違いなく方向性を変えていた第3部 社会的指標
――市場のタイミングを計る3つの方法第4部 投資対象を選ぶ
――株が暴落する直前にリバランス
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